田中:本日はご多忙な所、お時間をご頂戴しまして、ありがとうございます。Aさんは、大手総合商社にいらっしゃって、企業再生のアドバイザリーファームへ転身をされました。
私と同じようなキャリアチェンジをされており、大変親しみが湧きます。

A様:本日田中様と対談させて頂けるとは思っておりませんでしたので、この様な機会を頂きまして、大変光栄です。宜しくお願い致します。

田中:御話可能な範囲で、現在どの様なお仕事をされておりますか?

A様:はい、現在は某企業再生のFAS(Financial Advisory Service)に所属をしています。金融機関や公的機関より依頼される、企業再生案件の事業と財務デューデリジェンス(通称:DD)を、マネージャーと同僚と進めています。
特にこのコロナ渦もあり、再生案件の依頼は大変増えております。

田中:(頷きながら)はい、分かります。コロナ影響により、当社も企業再生のDD及びターンアラウンド案件とセルサイドのM&A案件が増えております。貴社もスポンサー型のM&A案件も増加傾向にあるのではないでしょうか?

A様:仰る通りです。ただ、資金繰りそのものが大変厳しい中、メイン行の支援も打ち切られそうな場面が多いので、DDをしながら資金繰りをケアしなければならない案件が増えております。社内の先輩が仰っていたことは、以前の様な単純なリスケジュールを依頼する様な案件とは異なるようになってきたので、責任やクライアントへの関わりも全く異なる様になってきた、と仰っておりました。

田中:そうですよね。通常のリスケジュール案件で、我々アドバイザリー会社が関与をさせて頂いていた際の、進め方や論点が依然とは大きく異なる様になりましたね。
御話は変わるのですが、当方が伺うのも変ですが、総合商社から、企業再生のアドバイザリー会社へ転身をされた理由と苦労をされた点等はありますか?

A様:はい、ありがとうございました。まずはエクセルです。商社出身者は「エクセルを使えます」と良く仰られますが、「早く、正確に」と言う意味では、まずデュー(納期)がありますので、制限時間の中で、成果物を出すということが、商社時代のスピード感とは全く異なります。戦略コンサルティングファーム等も同様だと思いますが。
また、再生案件でもありますので、クライアントのシチュエーションも厳しい場面が多いです。例えば当社がクライアント様に関与している際に、DD中に資金繰りが悪化し、破綻懸念となる可能性も充分にあります。クライアントの現預金状況は、最優先になります。

田中:そうですね。事業会社時代は、クライアントが資金繰り破綻や粉飾決算をしていること等、全くのスコープ外ですし、論点になることもないですよね。
DDはDDで、ピッチャーが先発完投をしたり、登山の様に壮大で膨大な作業量ですが、一番大切なことは、クライアントから最大限信頼され、債権者である金融機関、保証協会、リース会社と黒子として、スムーズに利害調整を果たすことが、企業再生及び事業再生FASの最も大事な役割だと考えております。昨今は特に、コロナウイルス型案件の影響もあり、スポンサー型の再建が減り、且つ資金繰り破綻が迫る案件が多いため、我々アドバイザリーとしても力量が問われていると思います。

A様:そうですね。通常のリスケ案件も債権者の数が多ければ多かったり、事業性が厳しく、なかなかPLがリカバリーし辛い業種業態の事業では、それなりに大変ですが、このコロナの影響もあり、再建計画の蓋然性が大切になってきていると、当社の上席のパートナーも社内で話しています。

田中:再生のアドバイザリーやFASと言うと、聞こえは良いですし、格好いい職業だと思わがちですが、勿論役割としては日本経済にとって大切な役割は担ってはいますが、やっていることは、PDCAサイクルをひたすら現場で回し、クライアントとの経営や財務理解も含めた高度なコミュニケーションスキルも求められますので、一人前になるのは大変な道のりだと思います。やりがいに満ちていますので、是非是非一人でも多くの再生のFAS業界で働く方々が増えて頂きたいなと私自身も考えています。

A様:本日はお忙しい所有難うございました。能力や胆力をもっともっと向上させていきながら、まずは社内でプロジェクトマネージャーを任せて頂けるように、精進していきたいです。今後とも宜しくお願い致します。

田中:こちらこそ宜しくお願い致します。本日はありがとうございました。