企業及び事業再生コンサルティングやM&Aアドバイザリー等、クライアント企業の経営課題の解決支援を行うブルーリーフパートナーズ株式会社。株式会社T&INKキャピタルとは共同で、事業再生案件に取り組んだ経験があります。代表取締役・CEOの小泉誉幸氏と株式会社T&INKキャピタルの代表取締役の田中が事業再生業界の魅力や業界で求められる人材について語ります。

 

目次

出会いは前職。共に事業再生案件に取り組む

田中:小泉さんとは前職のLBPでの先輩・後輩関係でした。 

小泉CEO(以下、小泉):当時は、お互いそれはもう沢山働きましたね。多くの学びを得たと思っています。田中さんは当時から自分の意思が強くて、決めて進む力が飛び抜けていました。多くの人には出来ない力強さがあるなと。

 田中:いい意味での我の強さは小泉さんもなんですけどね。だから、ゆくゆくは独立するんだろうなという印象はありました。自立心の強さはお互い似た部分がある一方で、小泉さんは私より人から好かれるなぁと(笑)。

 小泉:(笑)

田中:似た部分を持ちながらも、タイプは違う。そんな小泉さんと、本日は対談をさせて頂きたいと思います。ブルーリーフパートナーズ社とT&INKキャピタル社では、これまでに約3件、共同で事業再生案件を担当して来ましたね。

 小泉:お互いに助け合える部分を担ってきた形ですね。田中さんが引き受けたDD(デューデリジェンス)の実働部分を当社で、お引き受けさせて頂いたり。

 田中:去年の12月には、千葉の卸売会社の事業DDを小泉さんが受託され、当社がお手伝いをさせて頂きました。

 小泉:現場にも当たり前ですが、初日から足を運び、改善点のヒアリングから最後の計画の所まで、ご一緒して頂きました。今もモニタリングをしていますが、施策が功を奏しておりまして、お蔭様で上手くいっていますよ。

 田中:私と小泉さんは、クライアントの組織や人の利害関係を把握し、主体的に能動的に巻き込んでいく、という手法が共通ですよね。
DDの段階から机上の数字を作り込むのでは無く、クライアントの従業員さん達達が主体的に、やりたいように対話を重視しながら巻き込んでやっていく。CFOをやられていたりする点も私と似ていますよね。

 小泉:相手会社に入り込みたいタイプなんですよ。経営の意思決定まで入っていき、KPIを決めたり改善したり、事業のアイデアを創出したりとやり方を変えることで結果を出す。利益がきちんと出るようになったり、社員間の関係性も良くなったりですよね。間近で見ていると面白いですし、やりがいがあります。

 田中:これまでの事例で御話出来るものはありますか?

 小泉:大赤字だった製造メーカーですね。もちろん全てが私の力ではありませんが、クライアントの尽力もありまして、EBITDAが▲7,000万円の赤字状況から、当社関与後の2年後にはプラス5,000万円まで復活出来ました。

 田中:奇跡的ですね。

 小泉:流石に奇跡ですね。誰も起死回生を信じてはいませんでした。数年ぶりに賞与が出て社員様経が喜ばれているのも見られ、嬉しかったです。但し、経営者とずっと良好な仲でいるのは難しいですよね。というのも、お金を頂く以上、成果を出すのが私の仕事ですから。
 CFOとして成果を出そうとしたら、新規事業を始めて推進してと、都度プロジェクトを立てて進め、その先に価値も出さなければなりません。ただ、小さい企業になればなるほど、新規事業を何個も始めるのは難しい。

 田中:しかも、自分の会社の経営もある訳ですから。

 小泉:ええ。クライアント企業の事業展開だけを考えていれば良いわけではないため、価値を出し続ける手を打ち続けるのは難しいと感じています。

 田中:中小企業は、こちらからすると当たり前のことが抜け漏れているケースも多いため、その段階にいる時は結果を出し易いですけどね。トップラインを引き上げるのは、もうアートの世界だなと思っています。会社経営者の信頼を得た上で、施策を打って当てなければならない。なかなか出来る人はいない印象です。

 小泉:経営者と事業の方向性を決めてスケジューリングを一緒にしていく力が重要ですね。プロ経営者としての知識やスキルは、前職時代に身に付けた財産です。

 田中:事業を俯瞰する力は、M&Aの世界でも持っているかどうかで大きく違ってくる大切なスキルだと思います。

一気通貫に任せられること・拡大傾向にある点がブルーリーフパートナーズ株式会社の特徴

小泉:弊社の特徴は、一気通貫で様々なことを担える所だと思っています。メンバーには会計士のバックグラウンドを持っている人が多いです。 

田中:税理士法人もされておられますね。

 小泉:はい。最近は社会保険労務士の方も加わりました。様々な士業の方がいるため、「ここに頼めば全部やって貰える」のが弊社の強みであると認識しております。事業再生の観点で言うと、銀行借り入れのリスケジュールから債権カットまで経験したことのある人が何人かいるため、そうしたことも出来る点は特徴かなと。
あとは自己投資している点も特徴ですね。単なるコンサル会社で自己投資している所は少ないので。

 田中:どんな会社や事業に自己投資されているんですか?

 小泉:最近は印鑑業を営まれている企業を買収させて頂きました。

 田中:このご時世に印鑑屋ですか?

 小泉:面白いでしょう?印鑑屋を今やろうだなんていう人は、そもそもいないですし、私の世代だと尚更です。しかし、残存者利益を享受出来る事業環境であると考えておりますし、やりようによって成長させられたら大きな売りにもなるなと。田中さんから見て、弊社にはどういった特徴がありますか?

田中:まず、小泉さんが個人として、独立を見据えながら必要な能力をきちんと身に着けた上で、リスクを負ってリターンをきちんと得たというのは大きなポイントだと思っています。「独立したい」と言う人は多いですが、実際に実現させる人はそうはいないので。独立後、会社も年々成長されていますよね。

小泉:来年度には新卒3期生を迎え、正社員数は25人程になりますね。拡大傾向にあるというのも、弊社の特徴かもしれません。

田中:特徴だと思います。この業界は、DDしかやっていない等保守的な傾向がありますからね。ブルーリーフパートナーズ社は事業をやっていく視点がある。目立ちたがりとでも言いましょうか(笑)。

小泉:出たがりですね(笑)。というのも、大きなことをやるためには、会社が大きくないと現実的に出来ないことが多いんですよ。そして、大きな会社でないと会計士の採用も難しい。弊社で多くの会計士を雇用させて頂いておりますのは、私が会計士の友人に恵まれていたからであり、今の弊社の規模だと普通ここまで採用出来なかったと思うんですよ。やりたいことをやるために、会社を大きくしたい。だからこそ、新規事業にも力を入れていきたいと思っているんです。

田中:なるほどですね。

小泉:後は、社員の育成や成長面も考えていますね。社員が意思決定に携われる場を増やしていきたいです。自分で判断して決める立場に身を置くことで成長出来ると考えております。自分の所の事業だけしかやっていない状態だと、私が全部決められるじゃないですか。任せようと思っても、目が届く範囲内だと口出ししたくなってしまいますし。

田中:新規事業を増やすと、必然的に社員に任さなければ回らなくなりますね。

小泉:そちらの方が言いなと。口出しをしたくなる余裕がない程度に数を増やして、社員には経験を重ねていって欲しい。その方が面白いと思っています。

「結果を出す」意欲の高さが、キャリアの成長を後押しする

田中:M&Aや事業再生領域で活躍する人材に求められる素質や能力、何だと思いますか。

小泉:根本は欲の深さじゃないでしょうか。「これがやりたい!」という欲求が強烈にあると、おのずと手を出すじゃないですか。黙って見ていられないと言いますか。欲に衝き動かされる形で高いモチベーションが維持され、行動を積み重ねていくことで、更なるスキルや能力が身に付いていくのではないかと思います。

田中:行動力が求められる仕事ですよね。

小泉:“がむしゃらさ”ですよね。これまで生きてきた中で、何らかの成果を出した人が適している仕事だと思います。学歴や資格取得で結果を出していて、自分自身に対してどこか「自分はエリートなんだ」「やる男なんだ」と過信しているくらいの人の方がいいと思います。そういった素養のある御人が、結果を出すことに対する意識が違うんですよ。「出して然るべき」「出して当然」と強く思っているので、行動も結果も良い方向に引っ張られる。

田中:田舎から出てきたコンプレックスの塊みたいな人間もそちらに該当しますね。私は大学入学の18歳の時に、個人資産数万円の様な貧乏学生が、田舎から上京して来たのですが、ハングリーさは自分自身の推進力や原動力になりました。ただ、ハングリーさだけがあるのでは駄目で、能力をきちんと付けなければいけない。20~30代をどこの環境で、能力を身に着けるのかも重要ですね。やりたいことを選んでいるからやりたいことがやれるんじゃないんですよ。能力が増えることで、結局は運命ながら仕事の機会が増え、結果的に自身のやりたいことに手が届くようになるのではないかと思うことがあります。

小泉:能力を身に着ける場に関して、私達はLBPというフィールドの元、大変恵まれていたと思います。あと、スキル面で言うと、友達や友人が多い人はそれもスキルだと捉えています。対人スキルは人によって種類が違うので、これが正解という形はありませんが、長く付き合える友達が多いのは間違いなく強みです。会計士や税理士は保守的な傾向があると言いますか、手に職を付けたい職人気質のような所があります。例えば、Facebookで繋がっている友達が極端に少ない傾向にあるんですよね。ただ、私達の仕事も広い意味で言うと結局のところサービス業です。知人友人に恵まれていることは、自然と仕事に繋がるチャンスも増えるんですよ。ただ、もちろん打算的に付き合おうとか、知り合いになろうとするわけではありませんが。

田中:それは見透かされますよね。かえって縁遠くなりそうです。

小泉:私は飲みに行くことが多いですね。一度会って終わりでは無く、自然と数を重ねて関係性を築いているなと振り返ってみて思いました。一旦親しくなれれば、その縁は持続していき易いんですよね。その後、会える頻度が下がったとしても、再度会えば楽しく話せる。結果的に、仲良くなった人から他の方をご紹介いただけたり、ご紹介の縁から仕事の話に繋がったりしております。

田中:初めて会う際は、どんな人かある程度狙っているんですか?

小泉:いや、自然な流れですね。単純に人として面白そうだと思った人と、「飲みに行きましょうか」とやり取りするといった具合です。

田中:仕事の発注も、結局の所、コミュニケーションから信頼関係を築いた上で行われるので、非常に必要なスキルだと思います。改めて、M&Aや事業再生領域に転職を検討されている方に向けて、メッセージを頂けたらと思うのですが。

小泉:業界関係なく、財務や会計の知識を軸に事業に携われ、重要な意思決定に関われる魅力的な仕事だと思っています。事業再生もM&AもCFOも、総括してできる。興味がある方には非常に向いていると思います。仕事柄、過酷なことも多いので、メンタルも鍛えられますね。

田中:小泉さんが思う過酷さはどの様なケースや場面でしょうか。

小泉:お客様の多くは倒産が目前となっている会社です。期限までに何とか手立てを考えなければならないわけですよね。そのためには、住居の売却、個人預金の投入、長年働いて来てくれて社員のリストラ等、痛みを伴う意思決定をしなければならないことも当然あります。ただ、社長も人間ですから、頭で理解していても意思決定出来ないこともある。その背景を分かった前提で、会社を残すために「この決断が必要です」と告げるのも私達の仕事です。

田中:言う方も辛い。

小泉:辛いです。対象会社の社長に泣きつかれたこともあります。もちろん、他の手段も探しますが、それでもどうしようもないことはあります。その残酷な意思決定をするか倒産かを判断するのは、最終的に社長次第ではありますが。

田中:人間としての胆力が問われますね。

小泉:以前担当した家族経営の会社の案件では、役員が家族だということもあり、夜中の2・3時になっても会議をしていました。当たり前ですが、経営となりましたら、それくらい過酷な決断を迫られる。
ただ、「利益を出して会社を立て直す」方向を社長と一緒に見据えて策を考えられたら、起死回生出来る可能性もある訳です。策を打とうにもキャッシュがもうほとんど無い状況や場面も多く、予算の無い中で手を打たなければならないのは珍しいことではありません。仲良くなれた会社の方達が喜んでくれる事業再生が果たせた時は、やっぱり非常に嬉しいですよ。

田中:応援し続けたいですよね。やりがいがある仕事です。本日はお忙しい所、お時間を頂きまして、ありがとうございました。

小泉:こちらこそ、ありがとうございました。