AIから農業まで。50を超える事業を20以上のグループ会社で運営を行い、スピード感あふれる成長を続けるDMMグループ。そのM&A戦略を支え、現在はグループを統括するCOO室・室長として活躍されている長南氏に、弊社代表取締役CEOの田中が事業戦略や今後の展望、人材像をお伺いしました。

目次

デジタルコンテンツ・AIから農業まで

田中:まずはDMMグループの事業領域をお聞かせ頂けますでしょうか。恐らく読者の方のイメージとは違うのではないかと思います。

長南:現在は50以上の事業領域を、20以上のグループ会社で運営しています。主軸事業の動画配信やFXに加え、アミューズメント、Eコマース、自然エネルギーまで、積極的なM&Aを行い、事業拡大を続けて参りました。共通するのは、比較的ニッチな領域且つ、市場規模がそれほど大きくない分野で高いシェアを持とうという戦略です。
その一方で、近年では既存事業関連の買収から、農業スタートアップの「ファーマリー」やAIを手掛ける「Algoage」のグループイン等、新規事業領域への進出や既存事業の強化を目的としたM&Aを行ってきました。

田中:ジャンルや規模の大小に関係無く、未来を感じるビジネスに投資し拡大を続けてきたということですね。

長南:領域を問わず、なんでもやる。優秀な各事業部のメンバーの意思を尊重し、時流を捉える中で会長の亀山の懐の深さで次々とGoが出て、拡大と成長を続けてきました。
なぜ、ここまで実現出来たのかというと、外圧が働かない非上場の企業であること。
潤沢なキャッシュフローを積み上げていることが大きいと思います。現在のコロナ禍でも業績は右肩上がりを続けています。

事業の全社最適を推進していく

田中:連結で売上2,340億円程度の規模とお伺いしました。その中で、50以上の事業が相乗りして成長していけるプラットフォームの役割をDMM本体が担っている訳ですね。

長南:その一方で、新たな課題も見えています。今までは個別事業毎にキーマンが存在して、その意思決定の積み上げで事業全体のボトムアップを図ってきました。
元々明確な事業戦略を持たず、個々人が意思を持って挑むというのが企業の方針であり私達の競争優位性なので、これは当初の想定通りの結果です。
しかし、事業会社が50を超えると、事業ポートフォリオや人的リソースが散らばりすぎて、成長へのボトルネックになりかねないと感じています。

田中:そこで、全社戦略を再構築するCOO室の役割が大きくなっているということですね。

長南:はい、大きな方向性として散らばり過ぎた事業に軸を持たせます。まずプラットフォーム事業を軸に、関連事業の強化を優先していきます。ですから、新規事業やM&Aも、注力するプラットフォーム関連に絞っていく予定です。
同時に、人に基づく事業群から、戦略に基づく事業群へと再構築を行います。その上で、人材と資金をどうアサインしていくかを決めていく。
現在のCOO室の主な役割として、M&A推進等、投資企画、個別の事業を支援する経営企画、業務オペレーションの最適化を行う業務企画がありますが、全ての領域で全社最適の推進を行っていく予定です。

リスクを取って持続的な成長を実現する

田中:となると、現状の事業の数と規模に対して、人材は全く足りていないわけですね。

長南:足りていないです。全く足りていないです(笑)。だから、中途採用も強化しているのですが。元々COO室で年間15名程度継続して採用を行っていますが、関連する分野も含め、今年は年間で30名程度採用を行う予定です。

田中:仕事の魅力を御話頂けますか。

長南:1つはリスクを取って成長しようとしている会社であることです。
だからこそ、チャレンジの機会はいくらでもあるし、事業に向き合えば何でも出来る環境があります。そもそもDMMは大きな器のような会社で、DMM全体としての掟は、「金は盗むな」「詐欺はするな」の2つだけで、後は自由という方針で成長を続けてきた企業です。
これはどんな状況でも変わりません。
そして、もう1つはキャッシュフローが潤沢であること。資金が豊富だからリスクも取れるし素早く実行に移すことも出来る。私がDMMに転職した理由もそこが大きなポイントです。

田中:実際に入社してどのような仕事を手掛けられたのでしょうか?

長南:入社2ヶ月目まで社長のカバン持ちをやっていました(笑)。その中で、見えてきた課題に向き合ってきたという感じですね。まず、事業のスピードに人材が追いついていないので、採用を何とかしなくてはならない。
エージェントに社長を連れてプレセンを行い、継続して機能するリクルート組織体制を整えました。人材が追い付いていないので、マネジメントにも課題がある。
そこで、グループ会社の管理をやらせてくれということで業績の改善を行いました。
更に、見込みのない新規事業の撤退もやらせて頂きたい。ここまでで入社2ヶ月です。
加えて、当時の室長が経営管理に強い御方で、評価制度の導入や経営管理の基盤の立ち上げも行いました。ここまでで約1年です。
その後は様々な業務が継続して進む中で、当時の戦略の中心になるM&Aを手掛けていきました。

田中:社長直下で権限や裁量を与えられる中でご自身の役割を拡げていかれたということでしょうか?

長南:ここはちょっと特殊でなかなか理解して頂けない点ですが、DMMは組織権限が明確化されていなくて、権限規定もありません。社長直下だから権限があるという訳でもなく、その人個人に与信がつくイメージですね。
「本気の失敗を肯定する。」「テクノロジーとともに。」「誠実であれ。」「ちゃんと稼ぐこと。」「好奇心を忘れない。」というDMMの5つの約束「5 ESSENCE」があるのですが、それを実行した人がポジションに関係なく信頼されるということです。
私は入社後、社長室から経営企画室へ、そして現在のCOO室へと移り現在は室長ですが、肩書は変われど、他は何も変わりません。
裁量を持つために組織のこのポジションを目指すのでは無く、自分で意思決定を行う中で、気が付けばそれに見合ったポジションにいる、裁量も付いてくるということです。

田中:一般的に大企業でもベンチャーでも出来る人に仕事が集まるという感覚がありますが、更にその傾向が強いように思います。
実際に長南さんに仕事が集まって来ている訳ですが、前職のこのスキルや経験があったから、パフォーマンスが発揮出来ているという点はありますか。

長南:過去はベンチャーキャピタルやカカクコム、動画配信を行うベンチャーで経営企画、資金調達や提携、財務経理、総務、労務まで割と幅広く経験してきました。
今にして思えば、活かせていない経験は、ほぼないと言っていいと思いますが、これはDMMの器が大きいから幅広く経験が活かせていると感じています。
まぁ守備範囲が広くて何をやっているのか自分でも良く分からないのですが(笑) 。
その中で一番役立ったと思えるのは、25歳の頃に製造業の会社の破産処理をした経験でしょうか。衰退していくのはこういう会社何だと、肌で学びました。
その会社は、戦略の問題もありますが、スタッフや従業員の方の士気が低いんですよね。
私は破産処理を実行する立場なので、生活が変わる従業員からは、恨み言を言われるのかとも思いましたが、実際は冷めた感じでこうなると思っていたという反応だったのが当時20代の私にとっては印象的でした。
戦略に加えモチベーションが大事ということは別のベンチャーの経験含め肌で感じています。その一方で、もっと上手く出来たのでは?という自分の力不足も感じました。
私自身のキャリアを振り返ると、成功体験はあまりないと思っています。
上手くいかなかったから次はうまくやるという積み重ねで今に至っていると思いますし、現在もDMMでゴールが見えてきた訳でもなく、もっとこの会社を何とかしたいという想いは強くありますね。

起業までの中間地点に最適な環境

田中:欲しい人材像が見えて来たように思いますが、具体的に御話を頂けますでしょうか。

長南:何でも正面から議論し、事業に向き合う人。自身の意見を持ち、意思決定をする人。すぐやる、必ずやる、出来るまでやる人。これが私たちの人材要件で、“いいやつ”採用と私達は呼んでいます。DMMは変化を受容できる企業です。ですから、幅広い経験が活かせますし、幅広い経験も積めます。
更に資金も豊富で戦略の自由度や実行性も高い。これがマッチする方には稀有な環境だと思います。

田中:最近ご入社された方のバックグラウンドやキャリアに特徴はありますか?

長南:やはり何らか経営に近い経験をお持ちの方は多いとは思いますが、バックグラウンドは皆さん本当にバラバラです。逆に明確な特徴を持たせると、DMMらしさが消えていくとも思っています。ただ、大きく2つのパターンがあります。
1つは経営に近い領域で仕事をして来たけど、大企業で若手の内は、意思決定が出来ずもどかしさを感じている。
その一方で、独立起業するには自己資金も多くなく、不安があるという方です。
もう一つは、DMMと同じように事業展開が早いベンチャー出身。より影響力と潤沢な資金がある環境で力を伸ばしたいという方です。

田中:共通するのは、ファンドやベンチャーキャピタルではなく、事業側で経験を積みたいということですね。
プラットフォームビジネスのコアを経験出来、M&Aを含め新規事業も積極的にやられているので起業したい方にとっては、いい学びの場だと思います。
経営人材を輩出するというスローガンも掲げられていますね。

長南:特に大企業から起業したい方には、起業までの中間地点として最適な場所だと思います。実際に大手商社からDMMに来て、その後ピッチで優勝して、ITベンチャーを立ち上げた方もいます。
ただ、DMMの後のキャリアも多種多様です。起業ではなく、ITベンチャーの経営層として組織管理を担当され、急成長を担っている御方、北海道で街起こしを行っている御方も当社の卒業生はいらっしゃいます。
この御方とはFacebookで、繋がっていますが「エゾシカ捕獲しました」みたいな投稿を見ますね(笑)。

田中:面白いですね。社員の方のベクトルも一見バラバラなら、その後のキャリアもバラバラということですね。私も貴社に紹介する人材と面談させて頂く際に、DMMという会社は私が昔いたリクルートの様な経営者輩出企業という、御話をさせて頂いています。
会社規模は大企業なのに、まだまだ変化の余地があるのが魅力だと感じました。
本日はどうも有難うございました。